Q&A
遺産分割Q&A
亡くなられた方(「被相続人」)が遺言等を作成していない場合は、被相続人の遺産全部について、遺言が遺産の一部に関するものしか作成されていない場合は、残りの遺産について、共同相続人は「遺産分割」により当該遺産を分割することになります。 かかる「遺産分割」においては、各相続人の法定相続分のみならず特別受益、寄与分等の様々な事情を総合考慮して分割がなされること、各遺産の評価方法等の多くの問題が生じます。
そのため、上記問題に起因して遺産相続紛争が生じることが多々あります。
かかる「遺産分割」の問題を解決するためには、各相続人の法定相続分を基礎としながらも、本件相続における種々の事情を考慮し、適切に遺産分割協議、遺産分割調停、そして遺産分割審判を行っていく必要があります。
Q.
遺産分割とはなんですか?

A.
複数の相続人がいる相続が発生した場合、原則として相続財産は、当該相続人全員の共有となります。そのため、かかる共有状態にある相続財産を、財産の種類及び性質、各相続人の状態及び生活の状況等の諸般の事情を考慮して、各相続人に分割する手続のことを「遺産分割」といいます。

Q.
遺産分割の当事者について教えてください。

A.
1 総論
遺産分割の当事者は、共同相続人です。
2 未成年者
共同相続人の中に未成年者がいる場合には、当該未成年者の親権者が未成年者の代理人として、遺産分割に参加することになります。 遺産分割において、親権者が代理人となる場合には、未成年者と親権者、未成年者同士において、利害が対立するときがありますので、かかる点については十分に注意してください。
3 行方不明者
共同相続人の中に行方不明者がいる場合には、当該行方不明にかかる不在者財産管理人が遺産分割の参加することになります。
4 債権者
相続財産における債権者や相続人の債権者は、共同相続人ではないため、遺産分割の当事者とはなり得ません。 もっとも、裁判上の手続においては利害関係人として、遺産分割に参加することができます。

Q.
遺産分割後に認知によって相続人となった者がいる場合はどうなるのでしょうか?

A.
遺産分割後に認知によって相続人となった者がいる場合には、当該相続人の相続権とすでになされた遺産分割の効力との関係が問題となります。 民法は、かかる場合、遺産分割後に認知によって相続人となった者は、価額のみによる支払の請求権を有するとされています。 すなわち、遺産分割後に認知によって相続人となった者が遺産分割を請求したとしても、すでになされた遺産分割の効力は失われず、当該相続人は、金銭の償還請求権を有するのみとなります。

Q.
共同相続人の1人が欠けていても遺産分割をすることはできるのでしょうか?

A.
遺産分割は共同相続人の全員で行う必要があるため、共同相続人が1人でも欠けた遺産分割は無効となります。もっとも、各共同相続人の代理人が、当該共同相続人に代わって遺産分割に参加することは可能です。

Q.
遺産分割における分割の基準について教えてください。

A.
民法は、「遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする。」と規定しています。 したがって、遺産分割において、各相続人の法定相続分に拘わらず、諸般の事情を考慮して分割の割合を決することができます。 なお、遺産分割審判においては、各相続人の法定相続分が分割の基準として重要な位置を占めています。

Q.
共同相続人の中で、生前に被相続人から特別な贈与を受けている者がいる場合、かかる事情を遺産分割において考慮することはできるのでしょうか?

A.
1 特別受益
民法は、被相続人から、婚姻、養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた共同相続人がいるときは、当該贈与の価額を遺産分割において考慮すると規定しています(民法903条1項)。 上記考慮とは、遺産に上記贈与の価額を加えたものを相続財産とみなして、かかる相続財産に対する相続分を算定した後に、かかる相続分から同贈与の価額を控除し、その残金を当該相続人の具体的相続分とすることをいいます。
2 具体例
遺産が8000万円、相続人が配偶者及び子2名、その内の子1名が婚姻費用として2000万円の贈与を受けている場合の相続における各人の具体的相続分について検討します。 まず、遺産8000万円に特別受益の額2000万円を加えた1億円を相続財産とみなします。 次に、本件相続人の法定相続分は、配偶者が相続財産の2分の1、子2名は各々相続財産の4分の1となります。 したがって、本件相続人の具体的相続分は、配偶者は5000万円(1億円×2分の1)、特別受益を受けていない子は2500万円(1億円×4分の1)、特別受益を受けた子は500万円(1億円×4分の1-2000万円)となります。

Q.
被相続人は遺言により、相続人に対して行った特別受益を遺産分割において考慮しないようにすることはできるのでしょうか?

A.
特別受益に関する規定は、共同相続人間の公平を図るのみならず、被相続人の意思を尊重するための規定です。したがって、被相続人が相続人に対して行った特別受益を遺産分割において考慮しないよう遺言等により意思表示した場合には、遺留分に反しない限りで当該特別受益は遺産分割において考慮されません。

Q.
共同相続人の中で、被相続人の療養看護した者がいる場合、かかる事情を遺産分割において考慮することはできるのでしょうか?

A.
1 寄与分
民法は、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加につき特別の寄与をした者がいるときは、当該寄与分を遺産分割において考慮すると規定しています(民法904条の2第1項)。 したがって、共同相続人で被相続人の療養看護をしたのみならず、かかる療養看護によって被相続人の財産の維持又は増加があった場合には、かかる事情を遺産分割において考慮することができます。 上記考慮とは、遺産から寄与分の価額を控除したものを相続財産とみなして、かかる相続財産に対する相続分を算定した後に、かかる相続分に同寄与分の価額を加えた価額を当該相続人の具体的相続分とすることをいいます。
2 具体例
遺産が1億円、相続人が配偶者及び子2名、その内の子1名の寄与分が2000万円である場合の相続における各人の具体的相続分について検討します。 まず、遺産1億円に寄与分2000万円を控除した8000万円を相続財産とみなします。 次に、本件相続人の法定相続分は、配偶者が相続財産の2分の1、子2名は各々相続財産の4分の1となります。 したがって、本件相続人の具体的相続分は、配偶者は4000万円(8000万円×2分の1)、寄与分の認められない子は2000万円(8000万円×4分の1)、寄与分の認められた子は4000万円(8000万円×4分の1+2000万円)となります。

Q.
預貯金等の金銭債権は遺産分割の対象となるのでしょうか?

A.
預貯金等の金銭債権は、相続開始とともに法律上当然に法定相続分に従って分割されるものと解されています。 したがって、預貯金等の金銭債権は遺産分割の対象とならないのが原則ですが、共同相続人全員の同意等が存する場合には、遺産分割の対象となると解されています。 また、実務上、銀行等に預貯金の払い戻しに際して、遺産分割協議書等の提出が求められることがありますので、同書面等を作成しておく方が便利と思われます。

Q.
現金は遺産分割の対象となるのでしょうか?

A.
預貯金等の金銭債権と異なり、現金は遺産分割の対象となると解されています。

Q.
遺産分割の際における遺産の価額の評価時期はいつでしょうか?

A.
遺産分割の際における遺産の価額の評価時期については、相続開始時点とする説と遺産分割時点とする説がありますが、現在の圧倒的通説は、後者の遺産分割時点とする説です。 もっとも、遺産分割協議等においては、協議をまとめるため、共同相続人の合意により、評価時期を相続開始時点とすることも可能です。

Q.
遺言により遺産分割の内容を定めることはできるのでしょうか?

A.
被相続人は、遺言で、遺産分割の方法を定め、もしくはこれを定めることを第三者に委託することができます(民法908条)。
上記規定の本来の意味は、遺産を現存する相続財産をそのままの形で分割する方法(現物分割)、相続財産を競売や任意売却して、その売却代金を分配する方法(換価分割)そして、ある相続人が相続財産を取得する代わりに、他の相続人に対して対価を支払う方法(代償分割)のいかなる方法により遺産分割を行うかを指定するといものです。 しかし、現在では、遺産分割の具体的内容までも指定できるものと解されています。 したがって、被相続人は遺言により「A財産は甲が相続し、B財産を乙が相続する」等の遺産分割の具体的内容を指定できることになります。 さらに、被相続人は遺言により、一部の遺産の遺産分割方法のみを指定することもできます。 かかる場合、遺産分割方法の指定がなかった残余財産は、通常の遺産分割手続により相続されることになります。

Q.
遺言の内容と異なる遺産分割を行うことは可能でしょうか?

A.
共同相続人全員の同意がある場合には、遺言の内容と異なる遺産分割を行うことは認められます。

Q.
遺産分割協議後に遺言が発見された場合には、どうすればよいのでしょうか?

A.
共同相続人全員の同意がある場合には、遺言の内容と異なる遺産分割を行うこと可能であるため、遺言の内容と異なる遺産分割協議は有効となり得ます。 もっとも、共同相続人が当該遺言の内容を知っていたならば、当該遺産分割協議を行わなかったという蓋然性が高い場合には、当該遺産分割協議は錯誤によりなされたものであるとして、無効となります。

Q.
遺産分割はいつ行えばよいのでしょうか?

A.
被相続人が遺言によって遺産分割を禁止していない限り(民法908条)、共同相続人はいつでも遺産分割を行うことができます。

Q.
遺産分割の期間制限について教えてください。

A.
民法は、遺産分割の期間制限について何ら規定を設けていません。 したがって、共同相続人はいつでも遺産分割を行うことができます。 もっとも、時効が完成したものについては、遺産分割の対象とはなりませんので、この点については十分に注意してください。

Q.
遺産分割の効力はいつ発生するのでしょうか?

A.
民法は、遺産分割の効力は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずると規定しています(遺産分割の遡及効)。 したがって、遺産分割により取得した財産は、被相続人より各相続人が直接取得したことになります。 もっとも、民法は、遺産分割の遡及効を原則としているが、例外的に、相続開始後遺産分割前に現れた第三者の権利を害することはできません。

Q.
相続開始後遺産分割前に遺産から生じた果実(不動産の賃料等)はどうなるのでしょうか?

A.
遺産分割により取得した財産は、被相続人より各相続人が直接取得したことになります。 しかし、相続開始後遺産分割前に当該財産から生じた果実は、共同相続人間における遺産とは別個の共有財産と解されています。 したがって、当該果実については、共同相続人全員による遺産分割協議によって分割するか、訴訟手続によって分割することになります。

Q.
遺産分割にはいかなる分割方法があるのでしょうか?

A.
1 総論
遺産分割の方法としては、下記の(1)ないし(3)の方法があります。
(1)現物分割
(2)換価分割
(3)代償分割
2 現物分割
現物分割とは、現存する相続財産をそのままの形で分割する方法です。 例えば、A財産は甲が相続し、B財産を乙が相続するという方法です。
3 換価分割
換価分割とは、相続財産を競売や任意売却して、その売却代金を分配する方法です。
4 代償分割
代償分割とは、ある相続人が相続財産を取得する代わりに、他の相続人に対して対価を支払う方法です。 例えば、甲がA財産を単独で取得する代わりに、乙に対して一定の金銭を支払うという方法です。

Q.
遺産分割の手続はどうのようにして行うのでしょうか?

A.
1 遺産分割の手続としては、下記(1)ないし(3)の手続があります。
 (1)遺産分割協議
 (2)遺産分割調停
 (3)遺産分割審判
2 遺産分割協議
遺産分割協議とは、裁判所外において、共同相続人全員の協議によって、遺産分割を行う手続のことをいいます。 遺産分割協議がまとまった場合には、共同相続人全員の署名及び押印のある遺産分割協議書を作成することになります。 遺産分割協議がまとまらなかった場合には、各共同相続人は家庭裁判所に遺産分割を行うよう請求することになります。
上記請求の内容としては、遺産分割調停及び遺産分割審判がありますが、先に遺産分割調停を行うのが一般的です。
3 遺産分割調停
遺産分割調停とは、裁判所内において、裁判官及び調停委員の関与のもと、共同相続人全員の協議によって遺産分割を行う手続のことをいいます。 共同相続人全員の協議によって遺産分割を行う手続である点は、遺産分割協議を異なりませんが、裁判官及び調停委員という第三者が関与する点が、遺産分割協議を大きくことなります。 遺産分割調停が成立した場合には、当該遺産分割内容の調停調書が作成され、当該調停調書は確定した調停分割審判と同様の効力を有します。 遺産分割調停が成立しなかった場合には、遺産分割調停は遺産分割審判に移行することになります。
4 遺産分割審判
遺産分割審判とは、裁判所内において、審判官の強制的判断により遺産分割を行う手続のことをいいます。

Q.
遺産分割協議に錯誤、詐欺、脅迫等があった場合には、当該遺産分割協議の無効、取り消しは認められるのでしょうか?

A.
民法上、意思表示に錯誤、詐欺、脅迫等の意思の欠缺や瑕疵があった場合には、当該法律行為の無効、取り消しが認められています。 そして、遺産分割協議も法律行為であるため、錯誤、詐欺、脅迫等があった場合には、当該遺産分割協議の無効、取り消しが認められています。

Q.
既になされた遺産分割協議を再度やり直すことはできるのでしょうか?

A.
通説、判例等もに遺産分割協議のやり直し、すなわち遺産分割協議の共同相続人全員により合意解除をすることは認められています。

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